2014年1月31日金曜日

擬音418

擬音シリーズ「思ひ出(縛り煙収録)」から「指紋(汁菌糸収録)」までの418本を1冊のマガジンにまとめました。
単品なら110円×418本=45980円となるところを、29999円で販売いたします。
購入はnoteで→擬音418

2014年1月13日月曜日

汁菌糸


特殊な文章を11本収録。
「鳥」「司会」「質感」「体育館」「フケ」「ヒマワリ」「野球帽」「ロボット」「朝食」「カクテル」「指紋」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→汁菌糸

 抜粋作品:鳥

  左遷先ではネクスト大臣という役職に就いた。家の壁にスプレーで「ネクスト大臣」と吹きつけられていた。社内では大臣ではなく、ネクストと省略されて呼ばれている。ネクスト、確認お願いします。確認してもしなくてもいいものを確認する。マキグソとかスネ夫の落書き持ってくるんだぜ。それ、真面目な顔で確認するわけよ。Facebookにネクスト大臣就任って書くかどうか迷っている。会社名だけでいいか。でも大臣だから誇示してみたい、そんな思いもある。若いのが左遷されてきてネクスト副大臣になった。貧相で青白く、死んだ野菜のような男だ。俺に似ている。Wネクストと呼ばれるようになった。囲碁や将棋はやるのかね?食堂でネクスト副大臣に尋ねた。そういうものはやらないのだという。その代わりマリモを育てているらしい。「ほう」と感心すると、「楽しいですよ、でもね」ネクスト副大臣は持参したストローでカップのコーヒーをズルズルと飲み干してから続ける「生きてるのか死んでるのかわからんのです、だけどいずれ巨大化することを信じて眺めてるんですよ」。俺とネクスト副大臣の食堂での会談は盗撮されており匿名のTwitterで拡散された。社屋のどこかに匿名Twitterの主がいるのだ。俺とネクスト副大臣は背中合わせに立ち、鋭い目で社内を見渡す。だからといって何ができるわけでもなく、日経新聞を読んでやり過ごす。ネクスト副大臣のマリモに賭けるしかない。あれが巨大化すれば、何かが変わる。ガスタンクより大きくなったマリモを夢想する。申し訳ないネクスト副大臣、君は寝ている間に押しつぶされるんだ。だからマリモはネクスト大臣である私の管理下に置かれる。ガスタンクより大きいマリモが俺のものだ。俺はネクスト副大臣の墓参りをしてからビル群の中でゴロリと座るマリモを眺める。さらに大きくなるんだ、頼むぞ。ギュッと拳を握りしめたところで夢想から目覚め我に返る。ふとネクスト副大臣を見ると、座ったまま耳から血を流して、本当に死んでいた。

(了)

爬虫型


特殊な文章を11本収録。
「浴槽」「制服」「雲」「屏風」「定価」「地元」「駄作」「トイカメラ」「青」「ねじれ」「少女」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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 抜粋作品:浴槽

  毒ガスで風船を膨らませて、小学校の前で配る。家の水槽でサソリを飼っている。Yahoo!知恵袋でルミノール反応の消し方を聞く。そこそこの大学で就職先も吟味したのでブラック企業に入ることなく余暇を豊かに過ごしている。土手も歩く。晴天の青空をじっと眺めていると不安になって引きつった顔で笑ってしまい、バケツで様々な毒物を混ぜ合わせてしまう。子供達がビニールプールで遊んでいるような真昼の住宅街で。栗のいがのようなものを抱えて生きる。栗のいがのせいで心がスムーズに流れない。強力な溶剤を飲み干したくなる。曲がりくねった松のように晴天の空に向かって己を伸ばす。グニャグニャと引きつった笑顔で成長の悦楽に溺れよだれを垂らしながら上昇するのだ。正月にはあんぐりと口を開け長い長いムカデをズルズルと引きずり出す。この日の為に腹の中で飼い慣らしてきたムカデよ。福利厚生の充実したヤンキー上がりなどがいない職場でデスクワークに励みながらムカデもまたそこにいたのである。時折腹を撫で回し、ノートパソコンで無味乾燥な資料を作成する。どうしたんですか?なんて同じようにそこそこの大学を出た同僚に尋ねられれば、いや小腹が空いてね、なんて無味乾燥な返答を笑顔で返すのである。引きつらずとも笑顔が作れるというのに、晴天の青空の前ではそうはいかない。毎年引きずり出すムカデは長くなってゆく。体内がムカデに適応し、効率的に養分を送り込むようになっている。定年前には尻からこぼれる程のスピードで成長するようになっているのではないのだろうか。とても不安である。住宅ローンよりも不安である。夜中の住宅街では、怒鳴り声の聞こえる家などもあり、それなりに暴力の気配を感じ取れる。DVはワイドショーと現実の日常を繋ぐ架け橋だ。DVによってテレビの世界が私達の現実と地続きであることを教えてくれる。福利厚生の充実した職場の柔和な同僚や上司からも暴力が感じ取れるだろうか。誰が誰を殴っているかなんてわからない。今度上司の拳の匂いでも嗅いでみようかと思う。無論強引にそんなことはしない。適当な健康診断の話題などをでっち上げて拳を作らせ、了解を得た上で嗅ぐのだ。血の匂いがするだろうか。それでも自然な笑顔で、大丈夫みたいですね、とか答えておこう。

(了)

鼻蟲


特殊な文章を11本収録。
「棒」「工業用」「拡声器」「暗殺」「衆」「深夜ラジオ」「通販」「折れ線」「gif」「部数」「傀儡」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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 抜粋作品:棒

  整列!前へならえ!右傾化!ボヘミアン的生活!一年中麦わら帽子で過ごす。こんな都会のコンクリートジャングルで。麦わら帽子が風に飛ばされてもすぐにビルディングにぶつかってしまうじゃないか。銀座は未だに栄えている。銀座の滅亡を願っている。電気屋のテレビでプロレスを観ていた。だから血には慣れていた。戦場でも心に傷を負うことなく、平常心で敵を殺戮した。野球の用語も全て日本語にするべきだと学級会で提案した少年は平成の大地で何を思う。米帝によってもたらされた繁栄の下で何故にそんな野球をする必要があるんダニ?楽天の社員にFUCKと言ってやった。日本人にとってのFUCKと英語圏の人間にとってのそれは衝撃が違う。FUCKに対してどのような反応を示すのか?沖縄の次は楽天なのだ。楽天には核ミサイルを積んだ船が停留している。まことしやかに囁かれ、政治家たちは楽天返還に尽力するのである。三木谷が倒れても四木谷が控えており、さらに五木谷もいるのである。米帝の支配は終わらないのだ。しかし米帝が飽きたら終わりだ。連日のように続く米帝鍋は米帝次第なのである。MBAを取って鍋奉行にまで昇りつめた。鍋奉行として悪を裁きたい。外資の鍋奉行である。タジン鍋の、である。ハンモックで寝ている。欧化も極まった。森林浴で金玉まで洗う。穴という穴を磨き上げる。美容院で床屋政談。ナチュラルに流して総選挙ツーブロックツーブロック過半数。シャギって自公。ぶっきらぼうな優しさを強調しながら会見する新首相。戦略ではなくスタイリング。政権のスタイリング。普通で、普通でいいです。中韓への対応も普通で、普通でいいです。今までずっと普通でやってきた。ナチュラルに流したり、ウルフったりして良かったためしがない。水前寺清子みたいにしてください。は?あ、普通でいいです。楽天の支配する世界で、TOEICの猛者相手にどんな風に髪型を注文すればいいんだ、この俺は。

(了)

練昆虫


特殊な文章を11本収録。
「草」「無線」「セル」「封筒」「ベストセラー」「実録」「上下」「シーレーン」「歯磨き粉」「白黒」「サソリ」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→練昆虫

  抜粋作品:草

   亀を助け、サイバーエージェントの内定式へ連れてゆかれる。戻ってきて、どっと疲れを感じ、玉手箱を開けずとも急激に老けこむ。グルーポンのおせちを眺め、ODAの必要性を思う。戦争の傷跡、破壊された都市、上空からグルーポンのおせちのように見える。ジャンピングシューズを履いた鳩山由紀夫が世界へと飛び立ってゆく。滑走路を飛び跳ねながら高く高く上昇し、雲を突き抜け、異国の地へと降下するのだ。パッチンガムをオバマへ差し出したあの時、オバマは手を押さえ中指を立てて怒る。「ファック!」。「ファック言うもんがファック」。ケケケケケ。鳩山は怪鳥のような笑い声を上げながらジャンピングシューズによる跳躍でホワイトハウスの窓を突き破り姿を消した。ボーン・アイデンティティーのテーマ曲にのせて、太平洋を深く潜り、潜水艦の下をくぐり抜ける。マッコウクジラや巨大イカとすれ違う。鳩山は肉体の呪縛から逃れ、個体としてではなく、巨大な概念として世界を君臨する。全ての雨雲とその豪雨は鳩山の悲しみであり、激しい雷は鳩山の怒りである。巨大な隕石が衝突し、鳩山が発生した。鳩山は6日間出勤し、7日目に休んだ。有給で女体に似せた大根を作った。無断で休んだらオーナーに殴られた。グループのオーナーは半分ヤクザ者だった。泣き寝入りするしかなかった。生まれ変わるなら頂点捕食者になりたい。頂点捕食者同士来世で再び愛し合おう。頂点捕食者ばかりを集めた動物ビスケットを食べている。だいぶ強くなった気がする。毎朝太極拳を行い、獲物としての社会を眺める。莫大な資産の上で、鳩山は食物連鎖の風景を優雅に見下ろす。バサバサと飛び立ち、プロメテウスの肝臓をついばむ。太極拳の男が広場でライフルを発射する。家族連れが倒れる。ヒトが一番強い。ヒトは火を扱い、武器を持つ。俺はヒトだ。ライフルを持ち、俺は神に近づく。サスペンス映画でヒトの怖ろしさを知る。結局ヒトが一番怖いってことですね。コメンテーターがズバリと言うのだ。一番怖いのはスポンサーと大手芸能プロダクションだろうが。煎餅をかじりながら毒づいた。破損した原子力発電所の上空をハゲタカが旋回している。東京電力と経産省がバーニングプロダクションの傘下に入り、あらゆる批判は封じられた。個人事務所のチンピラタレントばかりが原発に括りつけられ、ハゲタカの攻撃に晒されるのである。

(了)

吊異界


特殊な文章を11本収録。
「鯉」「早足」「無痛」「親指」「ドイツ」「事故」「定番」「動画」「焼きそば」「毛穴」「自治」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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  抜粋作品:鯉

   豚のような夫婦に売り飛ばされた千尋は、熱海のエロ宿でピンクコンパニオンとして働いている。極上の未成年だったので突出した人気ですぐに稼ぎは増え、妬んだ他のピンクコンパニオンからは千尋ではなく、「せんずり」という蔑称で呼ばれていた。やり手婆婆のツバメとして囲われていた未成年ホストの「吐く」は金と生活の為にプライドをかなぐり捨て性奴として奉仕する日々であった。ある日、金を持った男を篭絡する為に整形を繰り返し、それによって顔面崩壊したカオイジリがエロ宿に現れる。カオイジリは千尋の稼ぎに関心を持ち、これを利用すべくおいしい話を差し出すのであった。が、過酷さの中で既に他人を信用する人格ではなくなっていた千尋は酒焼けした声でそれを拒絶した。希望を失ったカオイジリは付近の酒場で知り合ったヤクザに思いの丈を全て吐き出し、資産家と称する婆婆の家に連れてゆかれる。そのままカオイジリの消息は不明であったが天涯孤独の為、捜す者はいなかった。「北朝鮮にでも連れていかれたんでねえか、それともぬっ殺されて、内臓売られたんだべ、うひゃひゃ」やりて婆婆は吐き捨てるように言って笑い、「吐く」は性奴として頷くのであった。「吐く」はカオイジリ同様、千尋に新たな商売の可能性を感じ取っていた為、当初より協力的であった。千尋もまた「吐く」の思惑を感づきながらもエロ宿での立ち回りに彼を利用した。昔から「吐く」のような男は千尋の前を繰り返し現れ通り過ぎていった。皆、同じような屑であった。エロ宿を訪れる男たちに弄ばれ金を稼ぎ、それを目当てに「吐く」のような屑が次々と寄ってくる。生まれてからずっと、どうしようもないドブ川でのたうち回っているのだ。わずかに許された休憩の間、千尋は宿を抜け出し人生の抜け殻としてたくましく生きる己を引きずりながら温泉街を歩いている。橋の欄干から川の流れをじっと眺める。煙草を咥え火をつける。長い溜息と共に煙を吐き出す。曇り空の向こう側で柔らかい太陽の光が滲んでいる。暖かくもなく、肌寒くもなく。千尋は再び煙草を深く吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出す。ふぅっと吐き出しているその時だけ、人間に戻れるような気がするのだ。

(了)

硬質花


特殊な文章を11本収録。
「麦」「徳利」「冷夏」「量販店」「ボール」「痣」「技術革新」「別冊」「寄宿舎」「アンコウ」「不振」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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  抜粋作品:麦

   今日もめかぶ、明日もめかぶ、明後日もめかぶ、芋虫のような指で数え、ポテチの油でぬらりと光る唇を微かに舐める。思えばネチネチとネチネチと様々な学年で学級委員長をやってきたなあ。一般職OLに雑巾の絞り汁を飲まされてもいいように胃袋も鍛え、可愛げのない奴だと熱血教師に腹の底で秘かに嫌われても、虫のような顔でやり過ごす。全ての受話器はクレームをつける為にあるのだと、現代の至言を独りごち、岩波文庫に収録されるつもりで丹念に相手の落ち度を問い詰めるのだ。あああ、こんな自由主義社会はつまらない、警察国家になれば朝昼晩密告を繰り返すのにな、オイコラ警察、路上でハードカバーの本を渡すあれは怪しいですよ、コードネームX、獄、ワライ。頑張って頑張って教室で夕日を浴びながらペンを滑らし国立大学に入ることができたのだ。官吏になって外套を着たい、その一心で知識階級としての一歩を踏み出すのである。外套を壁に掛け、ボルシチをズルズルと飲み干し身体を温める。陰気な顔の一般職OLとマグカップを持ったまま陰気な眼差しで意気投合し、名画座で並んで座り古い映画を眺めるのだ。凍えた太陽の日差しによって、それが新しい生活の合図であるかのように、ネチネチとしたコラムを書き始める。馬鹿丁寧に事態を説明し、それにより事態の愚かさを際立たせ、大げさに褒め称え、言外に侮辱してみせる。ジメジメとした地帯に生える茸のように生まれ落ちたい、その希望が筆の力で叶えられるかもしれない。ボルシチを飲まずとも身体が熱くなり、粘液のようなもので心が満たされる。みなぎる活力で裏庭のゼンマイを全て刈り取り、思わず納屋で放置されていた樽の中に入ってしまった。こんなことをしてしまうとは。興奮していた。闇の中で濁った眼を見開く。人々のほんの些細なことが点と点を結び、侮蔑と嘲笑の対象として姿を現してくるのだ。無限にコラムが書けそうだった。足に絡みつく蔦のように文章を連ねるのだ。低い笑い声が裏庭から流れ、錆びたドラム缶などを通過し、寒空に溶けてゆくのだった。

(了)

皮箱竜


特殊な文章を11本収録。
「宝石」「冊子」「OS」「カード」「レジ」「踏襲」「錠剤」「劇場」「無限」「洞窟」「会見」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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  抜粋作品:宝石

   助平な古典を読んでしまう。詰襟学生服でいやらしい海外文学を買った。自分、文学が好きなだけですから。ポルノショップのデブと親しくなった。ロックがきっかけだ。品行方正であってもロックは聴く。ロックとポルノは誰しもが反社会的であることを教えてくれる。「欧州のポルノはすごい」デブは深いため息をつく「セックスは戦争なんだ」。2人で死海へ旅立ち、プカプカ浮いた。牛を追いかけまわしこれを犯し、煙草を吹かしながら乳を搾りとってジョッキで飲んだ。本物は重機を使う。重機を使ってセックスをするんだ。怯えながら欧州を眺める。遠くから眺めることしかできない。あいつらは皆大蛇を飼っているんだよ。大蛇を使って子供を躾けている。だから強い。彼等の教養と美意識の根底には大蛇がいるんだ。極東の猿はラノベを読むしかない。デブは絶望感に打ちひしがれていた。ポルノ愛好家は皆紳士的だ。非常に丁寧な言葉を使う。慇懃無礼でさえある。中国人を愛している!デブは叫んだ。日本海側の崖の突端に立って叫んでいる。韓国人も愛している!全てくれてやれ。愛のバカやろう。領土も資源も愛もリボンで縛ってくれてやれ。デブは立派な子供だった。俺とは違う。よくできた子供というのは大抵店舗を増やす。支店を出さなくて何が親孝行と言えるだろうか?店舗の神になりたい。全ての内装を支配するのだ。全て俺の指示だ。俺のイズムが内装の隅々に行き渡っている。俺の店にはポップアートが飾ってある。それは表の顔だ。地下のクリムトは限られた人間にしか見せない。細長い煙草を吸いながらソファに座って酒を飲む。極東にもこんな場所があるのだ。全て内装業者に一任した。内装業者は芸術家だ。内装業者を信じている。井の中の蛙、パンティーの染みを知らず。デブは死海でそう言った。どんなに地中海が美しくともパンティーの染みにはかなわない、俺にはそれが救いだよ…。誰もいない死海で2つの影だけが揺れている。卑屈な形をした2つの影だ。いつかそれを見つけたユダヤ人が笑うだろう。

(了)

袋格子


特殊な文章を11本収録。
「官僚」「丼」「ラーメン」「灰皿」「チケット」「闇」「文庫本」「府」「赤」「離人」「日記」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
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  抜粋作品:官僚

   婚約したカップルである、ゆず・北川悠仁と女子アナ・高島彩は円盤の墜落事故に巻き込まれ、未来帝国CXへと招待される。未来帝国CXでは女子アナが最高位の存在として君臨しており、男たちは便器のような名前を付けられ這いずり回っていた。男たちは皆女子アナを神として崇拝し、彼女たちへの奉仕を至上の喜びとしていた。女子アナ・高島彩は新たなる教祖として迎えられ、ゆず・北川悠仁は様々な葛藤を経た後、やがて女子アナ・高島彩の信者として服従するようになる…。より勢力を拡大していたフジテレビデモはこのような未来の秩序へ反旗を翻し、韓国人と肩を組んで体制瓦解を訴え始めた。マスメディアの失墜を願い女子アナたちをパンパンにすべくフジテレビの社屋をグラグラ揺らそうと尽力した。それしか手がなかった。インターネットには何もなかったんだ。廃人と社会不適合者の生放送で乗り越えられるものなんてどこにもない。「私は島田紳助ではない」。こう言い張ることで突破口を切り拓いた島田紳助にしか見えない島田紳助ではない何者かがマスメディアを君臨する。島田紳助じゃないんだからしょうがない。不問に付すべき問題そのものが存在しない。んだんだ。価値を紊乱し続けたテレビバラエティの究極の形としてこのような価値のゲームがまかり通る世界がそこには出現していた。価値を転倒させ殴り蹴り顔に唾をかける。フジテレビデモは未来帝国CXの樹立を阻止することができるのか?しかし仮にフジテレビ社屋が競売にかけられてもそれを買い取るのは島田紳助にしか見えない島田紳助ではない何者かである可能性が大きい。暴排条例が巨大な爆撃機のように影を落としてゆく。「私はヤクザではない」。ヤクザにしか見えないヤクザではない何者かがヤクザに見えないヤクザの時代を越えて、新しい価値のゲームを開始するのである。

(了)

ポコ腐


特殊な文章を11本収録。
「板」「青山」「事業」「会談」「トカゲ」「電話ボックス」「奴隷」「編集長」「武士」「平成」「大理石」。
料金(税込):880円(単品購入だと各110円)
購入はnoteで→ポコ腐

  抜粋作品:板

   Think different。ピカソやエジソン、アインシュタインやカラテカの入江などの映像が流れる。クレージーな人達がいる。自分が日照権を変えられると本気で信じる人達こそが本当に日照権を変えているのだから。厄介者と呼ばれる人達。自分は最低1年間やり抜く覚悟で佐川急便のドライバーになりました。貯めたお金で街宣車を買いました。同じ車を塗り替えて出会い系サイトの宣伝をしています。何かを積み上げるのが苦手な人間程起業を夢見るものである。藁を差し出して長者になった男の本を買い漁り、この子は藁を掴んで生まれてきたんですと期待を背負い、結局藁を掴んだまま寿命を迎え、速やかに焼かれ灰になる。私はあらゆる問題に対して慎重派である。賛成もせず反対もせず慎重派としての地歩を固め、ローションに流されるように前へと進んでゆく。カラテカの入江の下にもそれを頂点としたピラミッドがあるのだろう。社会というもののくだらなさには茫然とせざるを得ない。両手の指を繋げ小さな輪を作り、そこから社会を覗き、輪の中に収まる程度のピラミッドだけをそれが全てであると己に言い聞かせ羽ばたいてゆく。羽ばたいても羽ばたいても蠅のような音しか出ない。Think different。クレージーなだけの人達がいる。大量に犬を飼い、ゴミを集めたりするのだろう。氏の登場により町内会の空気は一変した。以前と以後の境目に立つ氏はやがて猟銃を持って隣家に立てこもり一家皆殺しの末警官隊に射殺される、これを町内会の人々は予想だにせず、不穏な空気の中子供の笑い声などが響き渡っているのである。

(了)